鈴木敏夫Pインタビュー「宮崎駿の映画は哲学である」

鈴木敏夫Pインタビュー「宮崎駿の映画は哲学である」―鈴木敏夫の仕事、健康

スタジオジブリ鈴木敏夫プロデューサーのインタビューが、第一三共ヘルスケア社のウェブマガジン働く男をアゲる健康マガジン「おれカラ」にて公開されている。

cats

画像:「おれカラ」



賢者の仕事、賢者の健康 鈴木敏夫プロデューサー インタビュー(前編)/働く男をアゲる健康マガジン「おれカラ」
賢者の仕事、賢者の健康 鈴木敏夫プロデューサー インタビュー(後編)/第一三共ヘルスケア社

前編では健康について、スタジオでの風邪にまつわる面白エピソードも語っている。
若い頃、宮崎駿監督から「作品作ってるのに風邪をひくとは何ごとだ!」と怒られて以来、制作中に風邪をひかないようにしたこと、本当に風邪をひかなくなってからは逆に「どうやって風邪をひくか?」を考えるようになったこと、しかし風邪をひいていられるのは仕事が休みである元日だけなので、どうやって1日で風邪をひいて治すかを考えたこと、次第に年をとった宮崎監督が風邪をひくようになり「風邪ひいちゃったよ、鈴木さん。仕事中に風邪ひくなんてサイテーだから」とバツの悪そうな顔をしていたことなど、鈴木Pや宮崎監督らしい様子が垣間見える。

そんな鈴木Pの健康法は、「言いたいことを言う」だとか。

“たとえば宮崎駿という人はね、あの人はもう無茶苦茶なんですよ。無茶苦茶って言うのは、自分が思いついたことはしゃべらなきゃ気がすまない人でしょう? そしたら、それ見てて我慢してるわけにもいかないから、こちらもついしゃべっちゃう。
僕は本来、常識あるちゃんとした人だったんですけど(笑)、それこそ40年近くつき合ってきたら似ちゃうじゃないですか? そしたら少し常識から逸脱する自分になったのかな? と。それもたぶん、健康の秘訣だったんでしょうね。基本的には我慢しないですから(笑)。まあ、宮さんのおかげですよね。

続いて後編では、プロデューサーとしての仕事の話が中心に。
雑誌編集長だった経験から、人を率いる立場として自分がやりたいことではなく、みんなの意見から選択する権利に徹するよう心がけてきた鈴木P。しかし一度だけそれを破ったのが『千と千尋の神隠し』の宣伝の時だったという。
宣伝部員はみな「これは千尋とハクの恋物語である」という意見だったものの、「千尋とカオナシの話」としてやろうと自分の意見を出したのだ。その理由のひとつは、主人公である千尋の次に出演時間が多いのはハクではなくカオナシであったことから、宮崎監督は「千尋とハクの物語」でやろうとしているのかもしれないけれど、無意識にはカオナシが大事なんだろうと考えたからだった。
これに一番驚いたのは宮崎監督自身だったという。

“「鈴木さんさ、なんでカオナシと千尋で宣伝してるの?」って。僕も困って「いや、これはそういう映画ですよ」って言ったら、ぽかーんとした表情してるんですよ。それで何も言わずに帰っていった。
それからしばらくして、主要スタッフで全編を初めて通しで見る試写会をやったんですが、それが終わったあと、宮崎駿がまたぼくの部屋に来て、今度はおもむろにこう言ったんですよ。「鈴木さん、わかった。あれ、千尋とカオナシの映画だね」って。

『STAR WARS』以来、映画のテーマが「ラブ」から「フィロソフィー」に変わった。そういった目でみていくと、宮崎駿の作品は明らかに哲学である。それを打ち出すためにも「カオナシがこの映画の中に何分何秒登場しているか?」が重要だったという。
そのフィロソフィーも大衆化した今、だれもがテーマを探しあぐねている時代。しかしそれは、だれにでも可能性が開けてるってことでもある。こんな面白い時代ないと思いますよ、と鈴木P。